またまた短編小説を書いてみたよ。

30になっちゃいました。ベレー帽です。こんにちわ。
今回はSSよりは長くて前の短編よりは短いです。ページ数で言えば文庫で11ページっす。読むほうは10分掛からないでしょう。書くほうは。・゚・(ノД`)・゚・。
内容的には前と同様にパロディ小説です。JOJO5部の既読推奨です。ま、知らなきゃ知らないで変な言い回し使ってるなあ程度で支障は無いようになってます。

荒木先生の他に、あの松本零士先生の言葉も使ってるし挿入歌も入っていると言う、やりたい放題な小説です。各章にサブタイトルが入っていますがSF小説のタイトルの引用です。気にしないで下さいw
感想などを掲示板によろしくお願いします。

■ ダイタンのょぅι゛ょ

作 ベレー帽

◆ ヴァーチャル・ガール

 わたしの名前は峰不二子12歳。正確にはそう呼ばれている少女かな、あ、訳あって顔は出せないの。う〜んそ〜ね〜、貴方が理想の美少女を思い浮かべるとするぢゃない?ちっちゃい頃からピアノとバレエを習ってそうな女の子とか、ぬいぐるみ抱いて寝てる女の子とか、最期の一葉を眺める病室の少女とか、とびっきりの笑顔をする女の子とか色々あると思うけど、そーゆーの全部足したくらいの完璧な美少女。それがこのわたしなんだけどイメージ出来た?OK?でね――
 ん?あ〜事件の話?何でって言われてもね〜、そ〜ね〜、う〜ん、なんとなく面白そうだったから。あは。わたしってば面白そうと思ったら、その時スデに行動は終わっているのよね〜。
 え?4億5千万ドル?そ、それはちょっとした大金かも。ま、まあもう済んぢゃったことぢゃない。

◆ 発狂した宇宙

 あ…ありのまま、今、起こったことを話すお。元宇宙飛行士の毛利さんに握手して貰おうと思ったら、いつの間にか逮捕されてたお。な…何を言ってるのか、わからないと思うけど僕も何をされたか分からなかったお…。頭がどうにかなりそうだお…。

◆ 異星の客

――駄目だ、こいつ。何とかしないと。三波晴一49歳は思わず呟いた。ここが秋葉原のある千代田区とは言えこいつは頭がどうにかなっている。
「あんだってぇ?もう一回聞くぞ。お前の名前は?」
「な、名前はぽこたんだお。光速の異名を持ち重力を自在に操るお。」ぽこたんと名乗る男は真顔で答えた。
――これが噂のゲーム脳って奴か。現実とゲームの区別が付いてないとか言う。三波はそんなものはテレビのでっちあげか何かで実際にそんな奴が居るとは思っても見なかった。見た所、男は30歳くらいだろうか。ゆとり世代と言うわけではなさそうだった。秋葉原ではよく居るsofmapの紙袋を下げてるタイプだろうと判断した。
「…あんまり非協力的態度だと公務執行妨害で逮捕って手もあんだがなぁ。あ〜これは独り言だぞ。気にすんな…よし、それじゃ職業は?」それは随分と大きな独り言だった。
「しょ、職業は暗黒騎士だお。」三波はグーで殴りたい衝動を必死で堪えた。殴ればこの手の奴はアムロの真似をするに決まっているからだ。
「もういい。職業はプータローって書いておくぞ。ああ今はニートっつうんだったか?」三波は流行りの横文字を使ってみた。
「じゃあ、あ〜そうだな、あの赤いランドセルがよく似合いそうな娘とお前との関係は?」
「ランドセル?何の話だお?」
「例えだよ。あ〜何つうのかな、まだお父さんとお風呂入ってます!みたいな女の子だよ。お前と一緒に居ただろうがよ!?」
「不二子ちゃんのことかお?峰不二子ちゃん。うちのギルドのリーダーだお。」
「…峰不二子ちゃんか。良い名前だ。これ漢字はどう書くんだ?」
「アニメと一緒だお。」「アニメって…おい、これ本名なんだろうな?」
「知らないお。会ったのも今日が初めてだお。」
「そうか…つまり!出会い系の援助交際ってことだな!」三波は机を大きく叩いた。
「くぁwせdrftgyふじこlp;@、違うお!オフ会だお!」驚いたぽこたんは訳の分からない奇声を発した。
「俺はこの目で見てんだよ。お前が嫌がる少女の手を握って何処かへ連れ去ろうとする所をな。」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@」
「俺の理想の美少女にあんな事やこんな事しようとするとは…貴様〜!」三波はオフ会とは何か知らなかったので状況からイヤラシイ会に違いないと断定していた。
「誤解だお。僕は二次元しか興味ないお。」
「つべこべ言わずに早くお前の使ってる出会い系サイトと彼女のアドレスを教えるんだ!相場はいくらなんだ!?どこまでOKなんだ!?」三波は厳しく取り調べた。職務質問がヒートアップして来たところでドアが開き署長が取調室に入ってきた。
「君、すまんが彼を帰してやってくれ。上からの指示で…な。頼むよ。」世の中は人と人との繋がりで出来て居る。だから人間関係は何よりも大切である。警察だからと言って例外では無かった。三波は不二子のアドレスを諦めるしかなかった。
「お前、上にどんなコネがあるんだ?」
「?上ってGMかお?知り合いなんて居ないお。」
◆ 接続された女
 ぽこたんが職質を受ける少し前の時間。都内某所ではギルド「パッショーネ」のオフ会が行われていた。既に3人が席についていた。
「おいすー^^。」遅れて男が一人、店に入ってきた。
「あ、ぽこたんが来たよ。」
「こんにちわ〜^^」
「あれ?B.Jさんは来てないのかお?」皆からぽこたんと呼ばれている男が尋ねた。
「あ、本業が忙しいって言ってた。あの人お医者さんなの。」峰不二子と呼ばれている少女が答えた。
「じゃあB.Jってブラックジャックって訳ッスか。そう言えばジョブもヒーラーだもんなあ。」と、これは室井と呼ばれている男。室井は秋葉原によくいる元ネタを解説するテリーマンみたいな物知り博士タイプだ。
「君だって他人のこと言えないぢゃん?警察官僚だから室井なんでしょ?発想が安易なんぢゃなくって?」不二子が言った。
「ちょ、それ内緒って言ったじゃないッスか!」バラされた室井が抗議したが不二子は本当に秘密なら最初から言わなければいいのにと思っていたので取り合わなかった。
「フヒヒヒ警察官僚かぁwww普段はシーフ(盗賊)なのにおかしいおw」ぽこたんの笑い声は変態みたいだった。
「それに室井さん人いっぱい殺してますよねw」これは大西と呼ばれている女性。女性なので誰も歳は聞かないが20代前半でキャリアウーマン風だ。秋葉原には絶対居ないタイプだった。
「リアルではちゃんと法律を守る模範警官ッスよ。…バレて無いですから。そうゆう御二人は何やってる人ッスか?」
「あら、わたしはスルー?」「いやいやいや、だって不〜二子ちゃんは聞かなくったってランドセルっしょ?」
「私、不二子ちゃんとは今日初めて会ったんですけど、まさかこんなピアノとバレエの帰り道なの!って少女とは思って無かったんですよ。むしろ年上のお姉さんかなと思ってましたし。」大西が第一印象を打ち明けた。
「そうそう俺もそう思ってた。だから最初大西さんを見て不〜二子ちゃんだと間違えたッス。まさかこんなぬいぐるみ抱いて寝てるような少女とは思ってなかったッス。それに俺、大西さんの事は男だと思ってたッスよ。」室井もぶっちゃけた。
「ああ、私、ゲームでは男って設定のネナベでプレイしていますから。ほらリアルが女だって分かるとアイテムとか幾らでも貰えて得って言えば得なんですけど…色々と面倒な事が多くなるじゃないですか?」
「わたしは利用出来る物は最大限利用するけどね。」不二子はさらりと怖いことを言う。
「ちなみに大西さんはマスゴミなの。勝ち組だけど堅気ぢゃあないの。」
「あは、そうですね。確かに堅気の仕事ではないです。」あんまりばっさり言われたので大西は思わず笑ってしまった。
「ぽこたんは?」室井が聞いた。
「ぼ、僕は働いたら負けかなと思ってるお。」ぽこたんが言った。
「ぽこたんは言動はちょっとゲーム脳だけど、あれよ。東大航空宇宙工学科卒よ。でも今は無職童貞だけどね。きゃはは。」
「フヒヒヒwwwヒドスwww」事実だったので否定はしなかった。
「航空宇宙工学ってのはアレすか?スペースシャトルとか?」
「あ、いやそうなんですけど、もう過去の物ですねスペースシャトルは。宇宙に人間を送るってのがもう時代錯誤って風潮でしてね。非効率的なんだそうですよ…だお。」宇宙の話を振られたぽこたんは素に戻っていた。
「…効率って宇宙ってそんなんぢゃないじゃん。ロマンとかセンス・オブ・ワンダーでしょ?」
「…今はもうそういう時代なんです。ケネディももう居ないですし、アポロとか過去の夢でしかないんです。僕だって始めは宇宙飛行士目指してたんですよ。でももう何もかも見失っちゃいました。」ぽこたんは、いつに無く自分語りを始めていた。もう完全に語尾は忘れて普通に喋っていた。
「――ぽこたん。わたし愚痴と言い訳は大っ嫌い。」ぽこたんの話は長くなりそうだったので不二子はばっさり打ち切った。
「…ぼ、僕はだって…。…ご、ごめんなさい。」気が付けば30男が12歳の少女に泣かされていた。
「犬やチンパンましてガチャピンだって宇宙に行ってんぢゃん?それにフォン・ブラウンやアーサー・C・クラークくらいの努力を貴方はしたの?」不二子にとって愚痴とか言い訳が許されるのは、やれる事は全部やった上で運に恵まれなかった人だけだった。
「まあまあ。そこまで出来る人間は稀だと思いますよ。」大西が見かねてぽこたんをフォローした。
「相変わらずうちのボスは厳しいなぁ。」
「あ、あの、ぼ、僕、今日は先に失礼させて貰います。」急にそう言うとぽこたんは一人で外へ出て行ってしまった。
「あらら?わたしちょっと言い過ぎちゃったかしらん?ちょっと待ってて。謝ってくる。」不二子はすぐにぽこたんを追いかけた。ぽこたんはまだ遠くへは行ってなく、すぐ近くの大通りで見つかった。
「やれやれ追い付いた。ん?どしたのぽこたん?あの人誰?」ぽこたんは立ち止まっていて遠くを見ていた。視線の先には50歳くらいの男が見える。向こうもこちらを見ている様だった。身のこなしからその男は何となく刑事のように思えた。
「あの人…。元宇宙飛行士の毛利衛さんじゃないかお?」
「ああ、そお言えばそうみたい。刑事かと思ってたわ。」言われて見れば確かに良くTVで見た顔だった。
「ちょ、ぽこたん何でわたしの手ぇ引っ張るの?」「行って握手して貰うお。記念に。」ぽこたんは目を輝かせて言う。
「いやいや、わたし別に興味無いけど?それよりさっきの謝らないと。ちょっと!わたしはいいってば!」不二子は引きずって連れて行こうとするぽこたんの手を振り払った。
 そこへ駆けつけた毛利衛さんにそっくりな刑事が、ぽこたんを何処かへ連れ去ってしまった。

◆ たったひとつの冴えたやり方

 その日は快晴無風で絶好の打ち上げ日和だった。種子島宇宙センターには不二子とぽこたん、それに刑事の三波の三人が居た。
「こんなのうまくいきっこ無いお。今ならまだ引き返せるお。」ぽこたんが決行を前に怖気づいていた。
「俺ぁ不二子様の頼みなら、空を飛ぶことだって湖の水を飲み干すことだって出来るぜ。」
「〜様?」どうやって不二子が三波を仲間に引き入れたのか聞いてなかったが、きっと最大限利用されているんだろうなと、ぽこたんは思った。
「二人共ゴメンね。わたしの我が儘に付き合って貰っちゃって…グスン。でもほんとにいーのよ、やめても?」今日の不二子にいつもの元気さは見られなかった。
「…いや案外俺が一番行きてーのかもしんねえなぁ。俺ぁよぉ万博とアポロを体験した世代だからよぉ。」これは三波に限らず当時の子供は皆そうだった。2001年には誰もが簡単に宇宙へ行けるようになると思っていたのだ。
「ぼ、僕は銀河鉄道999の再放送と宇宙船サジタリウスの影響だお。」
――ゴホッゴホッ。不二子が大きく咳き込んだ。手で隠しているが血を吐いたようだった。それを見た三波が言った。
「おい999でハーロックは鉄郎に何て言ったよ?」
「…男には負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある。 かな。…分かったよ。やろう。」
「ありがとね二人共。」
 三人は計画を実行に移した。その日予定の打ち上げは国産H2Aロケットではなく、NASAから借りたスペースシャトルだった。中国がやらかした衛星軌道上のゴミを除去する新装置の実験をするらしい。スペースシャトルの打ち上げ費用は約4億5000万ドル、その為ミスは許されない。警備も厳重でシャトルには近寄ることさえ出来ない――関係者以外は。
 三波が警備員に呼び止められた。
「あ、毛利さん、どうもー。お疲れ様です。そちらのお二人は?」
「親戚の子なんですけど、こいつらに打ち上げを見学させてやりたいんですが構いませんね。」三波は平然と答えた。
「ああ、どうぞどうぞ。」「それが、あの、今日は身分証明書を忘れてしまったんですよ。」
「あ、いいですよ。毛利さんなら顔パスで。ハイ。解除しました。どうぞ通れますよ。」どんなに万全のセキュリティを敷いた設備でも、それを運用するのは結局は人間だった。そして一度入ってしまえば誰一人怪しむ者は無く、三人はシャトルのコクピットまで堂々とノンストップで行くことが出来た。ノックをすると宇宙飛行士の男が顔を出した。
「え!?……毛利さん?今、管制室の毛利さんと通信で話してたのにィ〜〜!?外に居たのは毛利さんだったぁぁぁ!?」
 パニクっているその男に不二子が銃を突きつけて言った。
「馬鹿ね。そいつはルパンよ。そしてわたしは峰不二子。管制室の毛利さんとその他の皆さん聞こえる?わたし達はとんでもないものを盗みに来ました。」

◆ 悪徳なんかこわくない

「このぽこたんには夢がある!僕等の夢は宇宙飛行士!」
 犯行声明を受けて政府首脳陣と警察上層部が会議室に集まっていた。
「必要とあらば人質…ブッ殺すわよ。わたし未成年だから。」
 警察上層部は頭を抱えていた。逆に殺されるかもしれない危険を常に覚悟してきている犯人ほど手に負えないものは無いからだ。
「青島君!君の意見を聞こう!」総理が尋ねた。
「我々としては超法規的処置を適用して頂きたいです。」警視正の青島が答えた。
「テロに屈すれば国際社会の笑いものになっちまわないか?」
「いえ政治的な意図が無いのでテロとは言えないかと。単なるハイジャックとしか。」
「強行突入すりゃーいいぢゃねーか?女の子とヲタクと中年だろ?銃だって偽物なんだろ?」総理はかなりのタカ派だった。
「どんなに正当性があったとしても結果女の子を射殺したとなったらマスゴミに叩かれます。」
「やれやれだぜ。」
「それとあの銃は本物です。犯人の一人で中年の男の身元が割れています。宇宙飛行士の毛利さんに瓜二つと言う証言から千代田警察署の三波刑事に間違いないかと。ですからその拳銃かと思われるッス。」
「犯人共は実際使うと思うか?」
「あの娘にはやると言ったらやるスゴ味があります。要求を呑むしか有りません。」
「しかしなあ、それは悪い前例になっちまうよ。マスゴミや世論も納得しねえだろうよ。」
 チャラッチャラッチャラチャラーン。青島の携帯が鳴った。
「もしもし。…厳しいッス。勿論何とか説得するッスけど。え?次の手をもう打ってあるって?なんスかそれ?」――
そこで電話は切れていた。
「おいおい青島君、こんな時に出るかねぇ普通?君の相手は総理大臣よりも偉いのか?」総理は呆れていた。
 そこへ官房長官が息を切らして会議室に入ってきた。すぐにテレビを見るよう告げた。
「新しい情報が入りました。犯人達のリーダーで峰不二子と名乗る少女の詳しい情報が分かりました。少女は不治の病であり余命数ヶ月であるとの事。その為このような犯行に及んだとの模様です。尚、少女は未成年の為、顔を伏せて報道をしていますがご了承下さい。」

◆ 愛はさだめ、さだめは死

「――お気の毒ですが間違いありません。もって数ヶ月の命でしょうね。」巨乳の美人女医がそっけなく言った。職務質問から開放された翌日、ぽこたんは病院から急に呼び出され、不二子が急性の白血病であることを告げられた。白血病を有名人が掛かる病気だと思っていたぽこたんには悪い冗談としか思えなかった。
「そ、その事、本人は知っているんですか?」
「ええ、ご存知よ。あの歳で運命と言うものをしっかりと理解しているのね。あら、噂をすればなんとやらね。」席を離れていた不二子が病室に戻ってきた。
「あ、ぽこたん。ねえねえ聞いて聞いて、あたし白血病なんだって。でもどっちかって言うとわたしってば結核の方が似合ってると思わない?」ぽこたんは何も言えなかった。
「確かに儚げな薄幸の美少女よねぇ…喋らなければ。」
「ちょ、巨乳だからって言いたい放題ぢゃなくって?」不二子と女医は冗談を言い合っていた。ぽこたんにはそれが無理に元気を装っているように見えて辛かった。
「…何か遣り残した事はある?出来ることなら何でもするよ。」
「何でも?」不二子がニヤリと笑った。
「…出来る範囲で構わないなら。」
「ぢゃあさ、ぽこたんがオフ会で宇宙飛行士になるのが夢だったって言ってたぢゃん。わたしも死ぬ前に宇宙行ってみたいの。」不二子は無邪気に言った。
「…ごめん。それは無理です。そもそもどうやったら宇宙飛行士になれるのかさえ分からないです。毛利さんは元々は化学者で大学の助教授だったし、TBSの社員が宇宙に行ったケースもあるけど。宇宙旅行ツアーはまだウン億円するらしいし…。」
「方法ならあるの。それにはあの毛利さんに良く似た刑事、それと相当な覚悟が必要だけどね。覚悟は出来ている?わたしは出来てるわ。」

◆ 2001年宇宙の旅

「美談!少女は不治の病!犯行は少女の夢を叶える為!」新聞、テレビが事件をはやし立てていた。事件はじめの頃はキチガイによる犯行と憶測だけの報道をしていたが、動機が分かった途端、手の平を返したようにお涙頂戴番組に変わった。
「他に方法が無かったんでしょ?私にも同じくらいの娘が居ますけど、そういう境遇になったら私でもやるかもしれませんね。」主婦28歳。
「ハイジャックは犯罪だけど同情はするよね。何とかそのまま宇宙へ行かせてやって欲しいね。」新橋の会社員50歳。
「犯人達の命がけの行動!僕は敬意を表します!」ギャング16歳。

「マスゴミや世論は犯人達を英雄視してます。ハイジャック・スターとでも言いますか。けしからんですがこれなら悪いようにはならないかと。いえむしろ逮捕すれば我々が悪人になる恐れも…総理、ご決断を。」青島は言った。
「…してやられたな。奴ら世論の心を盗んでいきやがった。」「…はい。」
「…犯人の要求を呑もう。」総理は渋々決断した。

 数時間後、スペースシャトルは三人と夢を乗せて宇宙へ飛んだ。

◆ 天の光はすべて星

アポロ
作詞:ハルイチ/作曲:ak.homma/編曲作曲:ak.homma

僕らが生まれてくるずっとずっと前にはもうアポロ11号は月に行ったっていうのに

みんながチェック入れてる限定の君の腕時計はデジタル仕様
それって僕のよりはやく進むって本当かい?ただ壊れてる

空を覆う巨大な広告塔には
ビジンが意味ありげなビショウ
赤い赤い口紅でさぁ…

僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう
アポロ11号は月へ行ったっていうのに
僕らはこの街がまだジャングルだった頃から
変わらない愛のかたち探してる

大統領の名前なんてさ 覚えてなくてもね いいけれど
せめて自分の信じてた夢くらいはどうにか覚えていて

地下を巡る情報に振りまわされるのは
ビジョンが曖昧なんデショウ
頭ん中バグっちゃってさぁ


僕らの生まれてくるもっともっと前にはもう
アポロ計画はスタートしていたんだろ?
本気で月へ行こうって考えたんだろうね
なんだか愛の理想みたいだね

このままのスピードで世界がまわったら
アポロ100号はどこまで行けるんだろ?
離ればなれになった悲しい恋人たちの
ラヴ・E・メール・フロム・ビーナスなんて素敵ね

僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう
アポロ11号は月に行ったっていうのに
僕らはこの街がまだジャングルだった頃から
変わらない愛のかたち探してる

◆ タイタンの妖女

 スペースシャトルハイジャック事件から数日後、マスゴミは芸能人のゴシップを根掘り葉掘り聞きまわるのに忙しく、事件は早くも風化していた。そんな中、都内某所ではオフ会が行われていた。
「おつかれー。」不二子が言った。
「乙!」青島警視正こと室井が答えた。
「お疲れ様。」大西が続いた。
「乙カレー。」B.Jも続けた。
「えっと私は不二子ちゃん以外は会うのは初めてね。はぢめましてB.Jです。普段は医者をやってます。」
「…B.Jさんもネナベだったんスか。しかも巨乳だ。」室井は見たまんま口にした。
「B.Jさん病室でぽこたんに会ってるぢゃない。もっともぽこたんには何にも教えてないけど。」
「あは、そーだったわね。」
「ぽこたん何にも知らないんだ。ひでえ。」
「近い内には話すけどね。ぢゃないとわたし死ななきゃいけないし〜。」不二子は舌を出して笑った。
「白血病のカルテ偽装するの結構大変だったのよぅ。なのにマスゴミったら全然裏を取らないんだもん。無駄になっちゃったわよ。」こちらも悪びれずに言う。
「俺はぽこたんが職質されてた時に釈放するよう部下に命令したのと、総理の説得だけだったから楽だったッス。あの時の大西さんの世論操作効いたなあ。」
「私、捏造記事と印象操作は大得意なんですよ。」
「みんな本当に有り難うね。」全員で乾杯した。
「ところでぽこたんは?」
「ああまだちょっと拘留されてるみたい。わたしはほら少年法で守られてるからすぐ釈放だったけど。」
「手は打っといたんで、もうすぐ来ると思うッス。」既に英雄となっていた二人に執行猶予をつけるのは難しくは無かったと室井は語った。三波もそのまま刑事を続けられるだろうとの事だ。
「君は本当に頼もしいヤツね。知り合えて本当に良かったと思ってるわ。」
「いやいや俺は言われたとおりに動いただけ。不〜二子ちゃんのが凄いって。」
「ううん、たまたま運が良かっただけよ。それとみんなのおかげかな。」不二子にとって、出会いとは重力であり、人は出会うべくして出会うものだった。
「ほんと凄いわよ。あれでしょ?オフ会でぽこたん泣かせちゃったからってそんだけの理由なんでしょう?」
「うん。結局あの時、ちゃんと謝れなかったから。」不二子がとびっきりの笑顔で言った。
「不二子ちゃん…恐ろしい子。」

「おいすー^^」そこへぽこたんが店に入ってきた。
「あ、ぽこたん来たよ〜。」
「よーし今日もどっかいくかー。」不二子が言った。


不二子は何かまた面白いことを思い付いたようだ。